疲労は敵だが心地よい

 

[1]継続は力なり

 小学五年生の時の担任だった山中先生。当時どんな話をし、どんな授業だったのか覚えていないが、体格が良い割に気が小さく、ホームベースのような角張った顔に柔和な表情を浮かべ、声が優しい先生だった記憶がある。

 一つ強く覚えているのは、山中先生が初めて担任として着任する始業式の日、教室に入ってくるなり黒板の真ん中に書き出した「継続は力なり」の大きく縦に力強く綺麗に書かれた文字だった。これは先生の座右の銘で、事あるごとに「継続は力なり」と繰り返していた。

 卒業してからもう随分と経ちすぎているが、この言葉だけは僕の心にずっとこびりついて、時々ふっと脳内を掠めて、うっすら人生に指針を与えて続けてくれている。こうして何十年も僕の心に住み着いた言葉を教えてくれた先生は、真の教育者なのかもしれない。

 

[2]僕ははやおではない

 「開運ツアー」という胡散臭い名前を背負ってガストバーナーは東名阪で企画をしている。残りは名古屋のワンマンライブだけだ。先日東京編が無事に開催され、ほとばしるようなライブを終え、深夜2時過ぎ頃に下りの駿河湾沼津サービスエリアに滑り込んだ。

 どうやらメンバーは仮眠をとるらしい。僕はライブで出たアドレナリンのせいで眠くならなかったので「お腹すいたのでご飯食べてきます」と言って一人外に出た。そして寒いのに、景色が綺麗という理由だけで外のベンチに座ってぼーっとしていた。寒いのに、寒いのに。

 寒さと、ライブ後の疲労で靄のかかった頭の中から何故か「継続は力なり」という言葉が出てきた。山中先生までは出てこなかったが、こうしてライブして刺激のある日々を送っているのは、きっと何か継続の結果なのだろう。人生でちゃんと継続できているのは結局ドラムくらいだ。この継続の先には何が待っているのか。

 多分もうしばらくは人生楽しいだろうなと思っていると「はやおくん、ぼちぼちいこうかー」と連絡が入ったので車に戻った。そもそも僕の本名は「はやお」ではない。勿論苗字は「16ビート」でもない。これもまた、何かの継続の力で起きてしまった歪んだ現実なのであった。