冬に勝つには

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人間は所詮どこまで行っても動物の範疇を出ないので、冬の寒さや日照りの少なさで基本的に活動が鈍るし思考も後ろ向きになってしまう。

昨年に沢山あるはずだった「楽しい出来事」が次々に消えてしまい、今ある娯楽はほとんど全て「気を遣って慎重に行うので両手を挙げて馬鹿みたいに楽しめない娯楽」になってしまった。「なにも考えない楽しいこと」自体がどういう感触だったか、どういう心の動きがあるのかすっかり2019年に置いてきたまま今年に突入してしまったもんだから、活動が鈍る冬+心の動き方を忘れた冬という二重苦を背負うことになった。しかも先が見通しがつかないほど明るくないという好条件を添えて。

 

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少なくとも今年に入ってから僕はふわふわしていた。時勢のせいでいつまでも明確な音楽の道筋を立てられないことや、冬という季節が持ち込んでくる体の鈍さに付随して思考がマイルドになっていたんだと思う。怠惰はそういう隙間を縫ってやってくる。

体温をシャキッと上げないといけない。

鈍らないために、元日の朝3時から映画「ソナチネ」を見ていたのに、好きなバンドのツアードキュメンタリーを見て奮い立たせていたのに、気がつけば寒さにやられていた。暖かくなるのを待つのではなくて、自分から暖かくならなきゃいけない。

ウイルスがどうとか、それを取り巻く人間の阿鼻叫喚がどうとか、そうじゃなくて結局は自分の思考がどうかだ。冬に勝つには自分をしばくしかないな。なるべく強めに。