不幸せのレール

[1]

会社では、面談室のすぐ近くの席でデスクワークをしているので、時々上司と部下の面談のやり取りが漏れて耳に入ってくる。


「君はこれからこの会社でどうなっていきたいのか、一緒に考えよう」


上司は必死に、これから先のある部下のために幸せのレールを敷いていた。きっとこのレールに乗れば、社会でそこそこ不自由なく暮らすことができ、辛い経験もし、良い経験もし、満足して生きることができるんだろうなと思った。

 

[2]

ガストバーナーでMVを撮った。去る2月に惜しまれつつ解散したみそっかすのはるきちさん率いる新バンドだ。なぜか僕も縁があってそこでドラムを叩いている。


その撮影の最中に、はるきちさんと良く話したんだけど、底に漂う人生観に勝手にグッときたりしていた。


「MV撮影が終わった後に飲んだビールの1杯目だけが幸せだったのかもしれない」


撮影の翌日、はるきちさんはそう言っていた。

幸せは、定型ではなく、体にフィットするかどうかだけだ。