うつつまくら

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スタジオの終わりに乗り込んだ電車の向かいに座っている社会人カップル、彼女が彼氏の耳をずっと撫でている。

そんなことはどうでもよくて、昨日と一昨日はそれぞれガストバーナー『Happy』、ZOOZ『Wisteria』のレコ発でした。そして今日はまた別の練習でスタジオに入っていました。

 

体の疲労感とは裏腹に、音楽に対してのアドレナリンは出っ放しで、反動で仕事中は異様なほど眠かった。

 

[2]

ドラえもんで「うつつまくら」というひみつ道具がある。現実と夢とが入れ替わって夢が現実に、現実が夢に変わってしまう道具だ。

今日1日はなんだかそんな「うつつまくら気分」で仕事をうつらうつら過ごしていた。ライブも仕事も全部現実なんだけど、「ライブ直前の転換中、音楽と人の思考が蠢く感じ、今のご時世、あれは夢じゃないかしら」という気持ちになった。こういう熱が蠢く地場を久しく感じていなかった。平たく言えば興奮なのかもしれない。久しい興奮だったので余計にお腹にどかっとたまる喜びみたいなものがあった。みんなありがとうという気持ち。

 

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音楽をしてかっこいいと思ってもらおうなんて、ただの我儘でしかなくって、本当独善的でどうしようもなくて、目の前の社会人カップルが人目を憚らずキスをしだしたくらいどうでも良いことなんだけど、そんなどうでも良いことが案外人生を潤してしまったりする。僕は人目を憚らずそんなことはできないが、社会人カップルが引いてしまうほど、人目を憚らず馬鹿みたいにドラムを叩くことはしてしまう。

そんな感じでバランスが取れているんだと思う。これからも我儘に生きてしまうんだろうなと思う。